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【インタビュー】森に還る新しい選択肢──「循環葬®︎」とは何か?
更新日: 2025年09月19日
「循環葬」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
墓石を作らず、自然の中で還る場所を得るという、近年注目されている新しい弔いのスタイルです。形式にとらわれず、自然と共に生き、そして還っていく——そんな考え方を体現するのが、循環葬です。
今回は、その循環葬を手がける「RETURN TO NATURE」の正木さんに、サービスの概要から循環葬を選んだ方について、日々のやりがいまでお話を伺いました。
循環葬とはどのようなサービスなのでしょうか?
森の中で、墓石などを設けずに埋葬するスタイルです。基本的にすごい厳かな場というより、自然林に囲まれた軽やかな雰囲気で埋葬をします。木漏れ日が差すような時間帯に、森の中で静かに自然へ還っていく。そんな場所を提供しています。
形式ばらずに、自然の一部として旅立つという考え方が根底にあります。従来の墓参りのように決まったタイミングで来る必要もなくて、頻度も本当に個人差があります。月命日ごとに来られる方もいれば、「家族とのお出かけのついでにフラッと立ち寄る方、訪れるのは年に1度であとはご自宅から森の方面を向いてお参りするという方もいます。自然に還る場だからこそ、お墓参りをすること自体にも重きを置いていないんです。
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どのような方が契約されていますか?
自然が好きな方が多い印象です。と言ってもハイキングが趣味な方もいますし、旅行に行くなら都心部より瀬戸内のようなライトに自然に嗜まれる方もいます。
他にも、合理的で後世のことを考えて選ばれる方も多いですね。普通のお墓には墓石がありますよね?墓石があることで、管理が必要ですし壊れる可能性もある。だったら、「初めから作らないのが一番。突き詰めると自然に還る」という考え方になるんだと思います。その方が自然とも調和だ取れるので、循環葬は墓石を置いておりません。
全体的にお墓について考えるタイミングが早い方が多いようにも感じます。自分が元気なうちに決めておきたい、お子さんやお孫さんに迷惑をかけたくないというお考えの方が増えたことが背景にあるのかもしれません。
循環葬についての問い合わせは増えていますか?
多い月だと500件くらいお問い合わせをいただきます。以前は僕1人でパンフレットを全部送っていたんですが、今は手が回らずスタッフにも手伝ってもらっています。
今年の1月にNHKで特集してもらったんですが、そのときはさらに反響があって、前年比で10倍くらいの問い合わせがありました。そういう面でも「やっぱりニーズあるんだな」と感じています。
一時的にメディア露出で増えることもありますが、それ以上に循環葬を選んだ方からの紹介や口コミでのお申し込みが着実に増えているのが嬉しいです。しっかりとニーズに応えることで、認知や契約が増えていくことを実感しています。
喪服禁止とされていますが、その理由を教えてください。
僕は祖父と仲がよくて、中学3年のときに亡くなったんですけど、そのときみんなが喪服や黒い服を着て集まったことで、場が余計に暗くなってしまった記憶がありました。
また、代表の小池の仕事の先輩が亡くなった時、お葬式ではなくパーティが開催されたそうです。それは亡くなった方の意向だったらしく、パーティの招待状には「お香典もお花も無し。喪服ではなく、いつもの私と会う時と同じ服装で来てください」と書いてあったそう。その経験が、心に残っていたそうです。
循環葬を行う場所は、地面が土の森の中ですし、歩きやすい靴と日常と変わらない動きやすい服でお越しいただくようお願いしております。
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もし契約者が亡くなった場合、手続きはどうなるのでしょうか?
通常はご家族から、埋葬希望のご連絡が入ります。ご家族と疎遠だったり、連絡が心配な場合は、死後事務などを請け負う士業の方をご紹介しています。
また、生前契約の方が多いので、弊社に仮に何かあった場合でも対応できるように、寺院に引き継いでもらう体制を整えています。何百年とこの地で歴史を紡いできた寺院とのパートナーシップが、お客様の安心感につながっていると思います。
この仕事を通じて、やりがいを感じるのはどんなときですか?
埋葬の時ですね。ご遺族と共にご遺骨を土に還すのですが、循環葬を終えた後のご遺族の言葉や、表情にやりがいを感じます。「とても清々しい時間でした」であったり、「(循環葬というサービスを)つくってくれてありがとう」であったり。皆さん、晴れやかな表情でお帰りになられます。嫌な気持ちになることは、ほとんどありません。この仕事を始めてから大変なこともありますが、お客様の声を聞くと「また頑張ろう」と思えるんです。
今回ご紹介した事業者
循環葬®︎ RETURN TO NATURE(リターン・トゥ・ネイチャー)
公式HP:https://returntonature.jp/
編集部より
形式にとらわれず、自然に還ることを前提とした「循環葬」。
終わり方に正解はありません。ただ、こうした柔軟で静かな選択肢があることを知っておくだけで、「どう生き、どう還るか」を考えるヒントになるかもしれません。

編集者プロフィール

身元保証のけんさく編集部
月間数十件の身元保証・高齢者支援相談で培った実務知識を持つ専門編集者。
法律・介護・費用相場まで横断的に精通し、読者の「もしも」への備えをわかりやすく発信します。